私が直接話したプロの写真家
日本に住んでいたとき、よく写真展などを見に行った。東京都写真美術館は割合行きやすい場所だったのと招待券をもらう機会も多かったため展示も半ばぐらいのころを見計らって見に行っていた。
著名な写真家の個展では写真家本人による解説などもあるが、私自身は製作者本人にあまり興味がないのでそうした日はあまり行かなかった。で、たまたま行った日にその写真家が展示会場を解説しているのをある日遭遇してしまった。
長野重一さんという日本写真界の重鎮みたいな人である。この人は写真家というよりはジャーナリスト的な人だなと個人的に本などを通して思っていたが、とにかく、日本における報道写真の分野ではこの人抜きでは語れないぐらいの存在感を持った人だ。
会場ではとても丁寧に自分の作品を解説していた。私はこういう名前だけ知ってる人にこういう場所で出会うのは初めてだったのでちょっと遠巻きに眺めていた。
一通りの説明が終わって会場で売っている写真集へサインサービスが行われた。これも縁だなあとおもって購入する気もなかったのだが、一応購入してサインをしてもらった。私はそのころ、写真を始めてまだ3年かそこらだったのでずうずうしいとは思ったが質問をした。
自分でモノクロの現像、プリントをしてるんですがどうしても納得のいくプリントができません。原因がどこにあるか私のネガを見てくれませんか?
すると長野さんは私の顔をしばらく眺めてから手元の手帳に電話番号を書いて、非常に穏やかな口調で時間があるときみますからここに電話してください。
言ってみるもんだな!とかなりうれしかった。とにかく自我流で適当にやってきてしまったのでこんな有名な人に指導してもらえる機会がもてたことがうれしかった。
しばらくしてどのネガを持っていくか悩んでいるうちに電話をかけるのが非常に恥ずかしくてなかなかかけられなかった。初恋の相手へのデートを誘うよりも緊張した。
ネガを元にプリントを繰り返して自分の出せるだけの力で作った。やはりどこかかっきりしないプリントだったが、とにかくこれが今の自分の限界であるし意見を早く聞きたいという思いが毎日めぐるのだが、手帳に記された長野さんの番号を眺めるだけで数ヶ月経過してしまった。
ある日決心がついて平日の昼間に電話した。奥さんらしき人が出たのでいきさつを話すとちょっとまってくださいねといってから、どうやら長野さんを呼びに行ってるようだった。あーずうずうしい電話してるなあと思わずきってしまいそうだったが、やがて、長野さんの穏やかな声が聞こえてきた。もちろん記憶に残ってないと思ったので私は美術館でネガを見てほしいと頼んだ若造ですが。。というようなことをいうと、ああ電話来ないからどうしたのかと思ってたけどいつ見せられるの?今度新宿のコニカサロンで審査があるからそのとき来れる?私は覚えていてくれたことに感動したが、今度は実際に作品を見せることへの緊張が始まっていた。
新宿のコニカサロンへは約束の1時間前ぐらいには到着してしまった。長野さんは審査メンバーたちと忙しそうに動いてるようであちこちの部屋を行ったりきたりしていた。終わったら呼ぶから待っててねと言われ、私は展示会場でぶらぶらしていた。
しばらくすると長野さんがこっちの部屋でみせてもらおうかなといって私とサロン内の個室に入った。
私は挨拶もそこそこさっさと自分のプリントを出した。すると長野さんはあれ?ネガは?というのでしまった!忘れていた!ということに気がついたが、長野さんはネガが見たかったらしくプリントをさあっとめくるように眺めていってからこう言った。
うーん。。上手な写真です。でも写真の面白さがないですね。あなたの写真は絵描きさんが撮影する写真みたいで構図を考えすぎです。写真作家になりたいなら写真をとらないとだめですよ。
さすがだなとおもった。私はもともと絵を描くのが好きな人なのである。自分ではまったく意識してないが、絵の構図で写真のフレーミングもしているのだろう。
そして、あなたは芸術にかかわった仕事をしてるのですか?と質問してきたので私はいえ、技術系の仕事をしていますと答えると、じゃあ、写真は趣味で絵のほうを本格的に勉強されたらいかがですか?といわれた。
結局写真のセンスはないよと遠まわしに言われたのだが、これはこれで自分の中で区切りのついたアドバイスであった。以来私は絵を描きたいなと思い続けているのだが、落書きのような絵は描くもののまじめに勉強する機会はまだない。写真は撮り続けている。私の写真は写真らしくなったのだろうか。あれからもう7年ぐらいたってると思う。もう一度長野さんに自分の写真を見てもらえたらなと思う。
著名な写真家の個展では写真家本人による解説などもあるが、私自身は製作者本人にあまり興味がないのでそうした日はあまり行かなかった。で、たまたま行った日にその写真家が展示会場を解説しているのをある日遭遇してしまった。
長野重一さんという日本写真界の重鎮みたいな人である。この人は写真家というよりはジャーナリスト的な人だなと個人的に本などを通して思っていたが、とにかく、日本における報道写真の分野ではこの人抜きでは語れないぐらいの存在感を持った人だ。
会場ではとても丁寧に自分の作品を解説していた。私はこういう名前だけ知ってる人にこういう場所で出会うのは初めてだったのでちょっと遠巻きに眺めていた。
一通りの説明が終わって会場で売っている写真集へサインサービスが行われた。これも縁だなあとおもって購入する気もなかったのだが、一応購入してサインをしてもらった。私はそのころ、写真を始めてまだ3年かそこらだったのでずうずうしいとは思ったが質問をした。
自分でモノクロの現像、プリントをしてるんですがどうしても納得のいくプリントができません。原因がどこにあるか私のネガを見てくれませんか?
すると長野さんは私の顔をしばらく眺めてから手元の手帳に電話番号を書いて、非常に穏やかな口調で時間があるときみますからここに電話してください。
言ってみるもんだな!とかなりうれしかった。とにかく自我流で適当にやってきてしまったのでこんな有名な人に指導してもらえる機会がもてたことがうれしかった。
しばらくしてどのネガを持っていくか悩んでいるうちに電話をかけるのが非常に恥ずかしくてなかなかかけられなかった。初恋の相手へのデートを誘うよりも緊張した。
ネガを元にプリントを繰り返して自分の出せるだけの力で作った。やはりどこかかっきりしないプリントだったが、とにかくこれが今の自分の限界であるし意見を早く聞きたいという思いが毎日めぐるのだが、手帳に記された長野さんの番号を眺めるだけで数ヶ月経過してしまった。
ある日決心がついて平日の昼間に電話した。奥さんらしき人が出たのでいきさつを話すとちょっとまってくださいねといってから、どうやら長野さんを呼びに行ってるようだった。あーずうずうしい電話してるなあと思わずきってしまいそうだったが、やがて、長野さんの穏やかな声が聞こえてきた。もちろん記憶に残ってないと思ったので私は美術館でネガを見てほしいと頼んだ若造ですが。。というようなことをいうと、ああ電話来ないからどうしたのかと思ってたけどいつ見せられるの?今度新宿のコニカサロンで審査があるからそのとき来れる?私は覚えていてくれたことに感動したが、今度は実際に作品を見せることへの緊張が始まっていた。
新宿のコニカサロンへは約束の1時間前ぐらいには到着してしまった。長野さんは審査メンバーたちと忙しそうに動いてるようであちこちの部屋を行ったりきたりしていた。終わったら呼ぶから待っててねと言われ、私は展示会場でぶらぶらしていた。
しばらくすると長野さんがこっちの部屋でみせてもらおうかなといって私とサロン内の個室に入った。
私は挨拶もそこそこさっさと自分のプリントを出した。すると長野さんはあれ?ネガは?というのでしまった!忘れていた!ということに気がついたが、長野さんはネガが見たかったらしくプリントをさあっとめくるように眺めていってからこう言った。
うーん。。上手な写真です。でも写真の面白さがないですね。あなたの写真は絵描きさんが撮影する写真みたいで構図を考えすぎです。写真作家になりたいなら写真をとらないとだめですよ。
さすがだなとおもった。私はもともと絵を描くのが好きな人なのである。自分ではまったく意識してないが、絵の構図で写真のフレーミングもしているのだろう。
そして、あなたは芸術にかかわった仕事をしてるのですか?と質問してきたので私はいえ、技術系の仕事をしていますと答えると、じゃあ、写真は趣味で絵のほうを本格的に勉強されたらいかがですか?といわれた。
結局写真のセンスはないよと遠まわしに言われたのだが、これはこれで自分の中で区切りのついたアドバイスであった。以来私は絵を描きたいなと思い続けているのだが、落書きのような絵は描くもののまじめに勉強する機会はまだない。写真は撮り続けている。私の写真は写真らしくなったのだろうか。あれからもう7年ぐらいたってると思う。もう一度長野さんに自分の写真を見てもらえたらなと思う。

